ナイト アンド ミュージック

06


6.メローナイト


曲が変わった。
70年代のソウルミュージックに、身体を揺らしながら、グラスに添えられたライムをつまむ。

家で飲むときは、ざっくりジュースで割るだけだが、店ではちゃんとしたカクテルが出てくるよな……と、当たり前のことを考える。
ライムなんて、普通に売ってるもんか?そもそも、これって果物?

「……酸っぱ」

端っこを舐めて、その味に眉を寄せた。

「なにやってんだよ」

後ろで聞きなれた声がした。

「……ん、味見?」

振り返らずに言う。

騒然とした店内で、カナタの気配を感じると、安心する。
身体の強ばりがほぐれていき、俺は無意識に緊張していたことを知る。

「カナタ、今来たの?」
「うん。ちょっとバイト上がるのが遅くて……」

隣に立ったカナタを、やっと視界に入れる。
あまり表情は変わらないが、相変わらずきれいな横顔だ。

今日の客層は、わりと落ち着いた感じで、俺たちより上が多いみたいだ。
そのせいか選曲も、ガンガン踊らせるようなものでなくメローな雰囲気にまとめてある。
これはこれで、良いな。

カナタの気配を隣に感じながら、気持ちの良い音楽の波に漂う。幸せな週末の始まりだ。
俺は軽く目を閉じた。



「……ねぇ、きみってカナタくんじゃない?」

パッと目を開けると、茶色い巻き髪が見えた。

「そうだけど……もしかして、アカリさん?」
「やっぱそうなんだー。良かった、声かけて。久しぶりだねー」
「ほんと、久しぶり。今何してんの」
「トリマー。犬の毛を切ってる」
「そっか、専門行ってたもんな?」
「そうそう。ヒロもトリマーやってるよ?」
「……そっか。あいつも元気?」

カナタの表情が少し曇った気がした。

「ヒロとたまにカナタのこと話すよ。……全然連絡してないの?あんなに仲良かったのに……」

「……うん……忙しくて、なんとなく」

歯切れ悪くカナタが言う。

「ケンカしてるわけじゃないなら、またみんなで会おうよー。メアド、変わってない?」
「ん……。変わってないよ」
「じゃあ近いうちに、メールするね」
「……うん」

クルクルの毛先を揺らしながら、アカリという年上風の女は向こうへ去って行った。
カナタは、その後ろ姿をボーッと眺めていた。

なんか、心ここにあらず、だな。
胸がざわっとした。
ヒロって誰なんだよ?
聞きたい気もしたが、聞いても仕方ないかと思い直した。
俺には関係ない。

「カナタ、もう出よう?」

しばらく音楽に身体を揺らしていたが、あまりにカナタが突っ立ってるので、見かねて声をかけた。

「……うん」

カナタは大人しく着いてきた。
まだ出るには早い時間だったが、仕方ない。週末の夜なのに、台無しだ。
アカリという女が、フロアで踊っているのを一瞥し、軽く睨んでから店を後にする。

会話もなく、カナタと並んで歩く。夏の夜の湿った空気が、今日は重たい。
いい加減にしてくれよ。俺たちにこんな空気は必要ない。

「……ヒロって誰?」

一瞬カナタが、ビクッとしてこっちを見た。

「……昔の友達」

歯切れ悪く言う。
すっきりさせたくて聞いてみたのに、余計にモヤモヤした。



ほどよく筋肉のついた胸をまさぐりながら、その先端を舌でつつく。
カナタがピクッと反応したのを確認してから、舐めたて転がし、押し潰す。

「はっ……やんっ……」

可愛い声に、満足する。
ひとしきり、上半身をかわいがってから、腹筋をなぞり、下半身に移動する。
立ち上がり、揺れるそれに舌を這わせ、溢れる蜜を舐めとる。

「……んっ」

カナタが震えた。
俺は、そのままモノに食らいつき、激しく吸引しながら頭を振った。

「……ぁんっ……やっ……んっ」

カナタの喘ぎ声が、腰に来る。
俺は、片手で自分のモノに手を伸ばし、性急に擦り上げた。

やはり今日のカナタは、消極的だ。
カナタの痴態と、自身への刺激にヤバくなってきた俺は、カナタのモノから口を離した。
今度は手で扱きながら、舌を双球に這わす。舐めて転がし、強く吸ってから、舌先で縫い目をなぞる。

「ぁあん……」

カナタが一際艶っぽい声を出した。
なぜか誘われるように俺は、まだ触れたことのない奥のすぼまりに、舌を伸ばしてみた。

「……っ!」

カナタがビクッとして、腰を引いた。
構わず俺は、そこに舌先を這わせる。

「やっ!やだっ……」

頭を押さえられて引き剥がされ、カナタの顔を見上げると。
苦痛に眉を寄せて涙を浮かべたカナタと目が合った。

違う。
こんなふうに泣かせたかったわけじゃない。



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