ナイト アンド ミュージック

11


11.ナッシング バット スウィート ――sideカナタ


好きなんだ……

そう言われて、改めてミツの顔を見た。
切迫詰まった表情。 愛くるしい目に涙が溜まっている。

……本当に?
ずっと押し込めていた想いが通じたことを、にわかには信じられなかった。

「好きなんだよ!カナタ!」

ミツが叫ぶと、瞳から涙が零れ落ち、俺はたまらずミツを抱き寄せた。

「同じ気持ち……?」
「うん。お前がまだ、俺のこと好きでいてくれるなら……」
「好きだよ、ミツ……」

想いを込めて、言う。

「俺も、傍にいたい。……ずっと好きだったんだ。すっごく重いよ、俺?」
「いい。重い方が嬉しい」

ミツが背中に腕を回してくると、シャツがミツの涙で温かく湿った。



公園を出て、地下鉄に乗る。
通い慣れた道を、ミツと二人並んで歩く。
途中のコンビニに寄るのかと思っていたが、店の前でミツに手を引かれた。

鍵はミツの部屋に置いてきたままだ。
行かなくなってから1ヶ月。変わったのは季節だけか……。

秋の風を吸い込んでから、ミツについて部屋に入る。
後ろ手にドアを閉めると、前にいたミツが振り返り、飛び込んできた。

「カナタ……早く二人になりたかった」

嬉しい呟きに、頬が緩む。
ミツを抱きしめて首筋に顔を埋め、その匂いを吸い込んだ。

「好きだ……ミツ……」

「俺も好き……カナタ……」

抱きしめ合う力が弛み、それを合図に見つめ合う。
愛くるしい瞳が、まっすぐ俺を見ている。
長い睫毛が伏せられ、どちらからともなく唇を重ねた。

想いが通じ合ってからのキスは、甘く切なく胸を締め付ける。
最初は柔らかく、感触を確かめるように。徐々に深く、味わうように。

ミツの全てを吸い尽くしたい……。
お互いの唾液が混ざり合い、息継ぎの音と水音が響いた。飲み込む唾液も甘く感じる。
俺は、予想もしていなかった幸せに震えた。
抱きしめ合い、背中をまさぐり合い、唇を交わしながら、ベッドに倒れ込む。

「カ……ナタ……好き……」

合間に囁くミツに、欲情する。
性急に服を脱がし合った後、再び抱きしめ合った。
人肌の温もりに、じんわり幸せが広がってゆく。

「ミツ……ミツ……好きだ……好き……」

うわ言のように繰り返しながら、素肌をまさぐる。
首筋から鎖骨へ。肩に、腕に、指先に、唇で触れてゆく。

「……カナタっ……あっ……」

「感じる?ミツ……」

「……ん……もっと触って……」

以前と同じようで、違う行為。
饒舌な夜は、初めてだ。

激しいキスに、息が上がる。幸せすぎて、このままキスで窒息しても構わないとすら思った。
夜はこれからだ。 想いが叶った今夜は、俺は思う存分ミツをじっくり味わうつもりでいた。

「……カナタ……ぁ」

唇の端から唾液を滴らせながら、艶っぽい表情で、ミツが俺を呼んだ。
俺の欲情メーターはとっくにマックスを振り切っているというのに、どうしてくれるんだ……。

じっくりゆっくりのつもりが、つい性急にミツの下半身に手を伸ばしてしまう。
硬くなったモノをギュッと握ると、ミツが小さく声を漏らした。

数回擦った後、下へ移動し、それを口に含んだ。
想いが通じる前から何度も触れてきたが、今夜はまた違う味わいだ、と感じた。

念入りに、カリの部分を舐め回し、吸い付く。そのまま奥深くまでくわえて、唇で扱き上げる。数回繰り返すと、先端からジワリと苦い味が染み出て、ミツが感じてくれていることを知った。
滲む液体を吸い尽くしながら、頭を振る。

「ぁ……あっ……カナタっ……そ……んなにっ……したらっ」

ミツが俺の髪を鷲掴みにし、かき混ぜて悶えている。
めちゃくちゃ興奮する。

「……なに?……出ちゃう?」

恍惚とした顔を見上げ、濡れそぼるモノを放して聞くと、ミツが眉を寄せて頷いた。

「カナタ……俺にもちょうだい……?」

願望を素直に口にするミツは初めてだったので、余計に興奮した。
ミツの上ずった声に俺も結構限界だったが、やはりミツにしてもらいたい。

「……きて、ミツ……」

以前も、行為のときのミツは、別人かと思うほど厭らしく巧みにあっという間に俺を絶頂寸前まで追い詰めていたが、今夜はさらにタチが悪かった。

「カナタ……こんなところまできれいだなんて……」

うっとりとしたように、俺のモノを掴み、肉厚の舌で舐め上げる。
震えながら蜜を溢す先端に、チュッと口付けて、ミツが言った。

「きれいなピンク色……舌触りもビロードみたいだ……」

言葉責めだなんて……。
無言でしていた行為のときも、ミツに追い詰められるのはあっという間だったが、言葉を武器にした小悪魔なミツは、最強だった。

「……ミツ、もうっ……」

鈴口を舌先でこじ開けられるようにつつかれて、俺は音をあげた。

「限界?」

意地悪な猫の眼差しで、ミツが聞く。
正直に頷くしかなかった。

ここからは、一緒に絶頂を目指す。
はずだったのだが……。

「……カナタ」

ミツの眼差しは、恍惚としたものから、真剣なものへと変わっていた。



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