ナイト アンド ミュージック

12


12.オール オブ ユー


俺のカナタ。
俺だけのカナタ。
カナタが限界を訴えたところで、俺はずっと考えていたことを口にした。

「俺、お前を抱きたいんだ」

カナタは瞬きもしない。

「……ずっと考えてた。やっぱ嫌なんだよ、俺じゃないヤツがカナタを知ってるのが……」
「ミツ……」
「怖いのはわかってる。難しいなら、徐々に慣らしてからでもいい。……全部欲しいんだ」

息をヒュッと吸い込んでから、吐き出した。

「俺のになって。お願い……好きなんだ、カナタ……」

瞳を揺らしてから、カナタはゆっくり口を開いた。

「……いいよ、ミツ。俺はミツだけのものだ。俺の全部あげる……」

覚悟を決めたカナタに、優しいキスを一つ落とすと、俺は愛しい人と繋がる為に、一歩を踏み出した。

経験はあると言っても、数年前で無理矢理なら、初めても同然だ。
しかも、それがかなりのトラウマになっているようだし、なるべく優しくしてやりたい……。

俺も長期戦の覚悟で、カナタのその部分に触れた。
案の定、ピクッと身体を硬直させ、小刻みに震えている。

「大丈夫だから……」

震える身体をしっかり左腕で抱き締めながら、右手の中指で、すぼまりの周りを解してゆく。
苦痛に顔を歪めるカナタの瞼に、鼻先に、唇に、触れるだけのキスを繰り返しながら。

「カナタ……好きだよ……」

囁きながらも愛撫の手は止めない。

「……力、抜いて……」

硬くなった背中をゆっくりと撫で、キスを深くする。
その拍子に、少しカナタの身体の力が抜けた。
俺は、カナタの奥の部分に、指を滑り込ませた。

……まずは1本。
しばらくじっと留めておく。慣れるまで、慎重に……。
カナタがふーっとゆっくり息を吐いた。

「……大丈夫」

掠れた声で囁くカナタに、頷いて微笑む。
俺は指をゆっくりと動かし始めた。
カナタと繋がることを考え始めてから、俺なりに仕入れた知識を総動員し、そこを解してゆく。
しばらく1本の指で解し、抜き差しが容易になってきたので、カナタに聞いた。

「……次、いい?」

眉間に皺を寄せ息を吐いていたカナタは、それでも頷いた。
2本目を挿入する。

「……くっ……んんっ」

額には汗が滲み、苦しそうに声をもらすカナタ。

「大丈夫?今日はもう止める?」

焦らず慎重に、と考えていた俺は、手を止めた。
カナタは薄く微笑んで言った。

「……大丈夫。止めないで。俺も早くミツと繋がりたい……」
「カナタっ……」

思わぬ言葉に、背中に回していた左腕で、カナタをギュッと抱き締めた。
カナタの緊張を、身体と心の両側から解すように。ゆっくり、ゆっくりと……。

突然のことで、ローションなど全く用意していなかった俺は、時折唾液で指を湿らせながらカナタのそこを開拓していった。唾液が指に絡まり、蜜壺に出入りするたびに卑猥な水音をたてる。
かなり柔らかくなってきた。知識は入れてきたけど、本当にこんなふうに解れていくんだな……。

カナタの小刻みに吐き出す呼吸音を聞きながら、俺は考える。
苦しいばかりじゃ、ダメだよな。少しはカナタに気持ち良くなってもらいたい。

3本に増やし、拡張する動きをしていた指をゆっくりと抜き、中指だけを再び挿入する。
たしか……この辺りで指を曲げると当たるはずだ。

「ぁんっ……」

良かった。
カナタが一際高い声を上げ、俺は探していたポイントを見つけたことを知る。

「やっ……ミツぅっ……変っ!」

カナタがシーツを握りしめ、首を振って叫ぶ。
俺は構わずその1点を、中指の腹で引っかけるように刺激した。

「やっ……あっ……ダメっ」

力なく萎えていたカナタのモノが、再び立ち上がって揺れているのを横目で確認した。

「……カナタ、気持ち良くなってきた?」
「ミツっ……もう、俺っ……無理!」
「……やめる?」

『無理』の意味を知りたくて、聞いてみた。

「……やっ!ぁんっ……やめないでぇ……もっと……」

いつの間にかカナタは恍惚とした表情に変わり、瞳からは涙が零れている。
…そろそろ、いいかな。
指をゆっくりと引き抜き、カナタの足をゆっくりと持ち上げた。

「カナタ、いい?」

これは最終確認だ。

「きて……」

ぐちゃぐちゃの顔で、カナタがうっすらと微笑んだ。
やっとカナタと繋がれる。

カナタの身体を折り曲げるようにして、そこに目をやる。
散々刺激して、濃いピンク色に充血したすぼまりが、俺を誘っている。

俺も限界だった。
ひくつくカナタのそこに自身をあてがい、先端で周辺にゆっくり円を描くと、俺の先走りが潤滑油となった。
カナタを傷つけないように……。ゆっくりと挿入してゆく。

「ん……っ……」

さすがにカナタが苦しそうにうめいた。

「カナタ……力抜いて……」

カナタの呼吸に合わせ、息を吐き出すタイミングで、少しずつ入れてゆく。

「……もう少しっ……ほら……先が入った」

後は難なく入るはずだ。少しずつ腰を押し進めてゆく。
キツい。締め付けられすぎて、動いたらすぐにでもイッてしまいそうだ。

「く……キツ……。カナタ……っ入ったよ。……大丈夫?」
「ミツっ……ミツ、これ……で全部?……全部繋がった?」
「ん……これで全部だ」
「……嬉しい」

感極まったようにカナタが言い、俺の胸も締め付けられた。
たまらずギュッと抱き締める。

「ミツ、好きだよ……もっと、俺を感じて?」

涙目で上目遣いに言われると、限界だった。

「……カナタ、動いてもいい?すぐイッちゃいそうだけど……」
「ん……。して。俺でイッて」

一度動き始めると、絶頂まではあっという間だった。
こんな締め付けに、相手は愛しい人。我慢できる訳もなく、すぐに達してしまう。

「ごめっ……カナタっ俺……んっ」

スパークして頭が真っ白になる。
自分勝手にイッてしまった俺が脱力すると、逆にカナタに抱き締められた。

「良かった?ミツ……」
「ん……。最高」

しばらくカナタの胸に顔を預け、鼓動を聞いていたが、射精の余韻が去り、俺は顔をあげる。

「次はカナタの番。今日は一緒にイケなくてごめんな……」
「え……」

少し力を無くしていたカナタのモノを握り、ゆっくりと扱き始める。

「俺、余裕なくて……。もっとナカで感じて欲しかったんだけど……。ごめんな」
「んっ……ミツっ」
「好きだ……カナタ……」
「ミツ、俺もっ……」

途中で言葉を奪い、激しく口づけながら、カナタを追い上げてゆく。
深く絡まり合う舌。
激しく求め合う唇は、二人とも相当腫れているだろう。

キスの合間に漏れるカナタの声に、快感を確かめる。
激しく擦り上げられるカナタの先端からは、蜜が溢れ出ている。しんとした部屋に、水音が響く。

「もうっ……んっ」

カナタが一瞬身体を強ばらせ、俺の手に温かいものが広がった。

「カナタ……。好きだよ……」

茶色いサラサラの髪が、汗ばむ額に貼り付いている。
それを掻き分け、ひとつキスを落とす。
まだ息の荒いカナタが、俺を見上げて微笑んだ。

「ミツ……良かった、最後までできて」
「無理させた。ごめんな……痛かっただろ?」
「うぅん。……大丈夫。ミツが優しくしてくれたし」
「怖かった……?」
「……最初はね。でも、」

カナタがギュッと手を握ってきた。

「ミツと、全部繋がれて幸せ……」

握りしめられているのは手なのに、胸がキュンと締め付けられた。
カナタの全部……やっと、俺のものだ。



Copyright(C)2014 Mioko Ban All rights reserved. designed by flower&clover
inserted by FC2 system