ナイト アンド ミュージック

14


14. サティスファクション


カナタが、俺を求めている。
繰り返されるキスと、切迫詰まった眼差しは、痛々しいほどで、俺は声も出せなかった。
全身で俺を欲しがってくれているカナタが、心の底から愛しくて、熱くなった背中に腕を回し、宥めるようにさすってから囁いた。

「大丈夫、好きだよ。抱いて、カナタ……」

告げたら胸がキュッとなって、痛くも悲しくもないのに涙が出た。
動きを止めたカナタが、ゆっくり俺と目を合わせてきた。

「ほんとにいい?余裕なくて、優しくできないかも……」

不安そうに揺れる瞳。
大丈夫、何されても。

「きて……」

ゆっくりと目を閉じ、愛しい人に身を任せた。

カナタのサラサラの茶色い髪に指を絡ませながら、俺は必死で声を殺す。
誰にも触れられたことのない場所を、優しくとはいえ指で掻き回される感触。決して気持ちの良いものではない。

「ごめ……っミツ、しんどいよな」

カナタが眉を寄せて上目遣いに聞く。

「だ、大丈夫……続けて……」

なんとか声に出して、その先を促す。
確かに苦しくて気持ち悪いが、カナタと繋がるためには避けて通れない。前回は逆の立場だった訳だし、俺を気遣いながらも早く…と焦るカナタの気持ちが痛いほどよくわかる。痛みも苦しみも全てを理解しあった先に、幸せがきっと待ってる。
永遠のように長く思える時間が経過し、カナタが囁いた。

「ミツ……3本入ったよ……」

ただ苦しいという感覚だけで、実感が湧かない。

「も少し我慢してて……ミツのいいとこ、探してみるから」

俺の目を覗きこんで柔らかく微笑んで言うカナタに、拒否なんてできやしない。

「……いいとこ、な……んていーよ。大丈夫だから……も、入れて……」

かすれた声で懇願してみる。
が、カナタは納得がいかないらしく、俺の中から指が出ていくことはなかった。
しばらく内臓をえぐられるような動きが続いた後、

「……っん!」

突然、身体の中を電流が流れ、全身が跳ねた。

「見つけた。良かったぁ……これでミツを気持ちよくさせてあげられる」

満足げにカナタは言うが、俺はそれどころではなかった。
指先で引っ掻くように、繰り返しその1点を刺激される。
何度も何度も、跳ねる身体。奥から沸き上がる強烈な快感に、俺は恐怖した。

「カ……ナタっ!やめっ……マジで……おかしくなっちゃ……」

「ミツ……もっと感じて。おかしくなって」

「……やっ……あんっやだっ……」

刺激されているのは中身なのに、下半身に熱が集まる。

「……ミツ、気持ちぃ?……こっち、触ってないのにまた勃ってきたよ」

カナタが嬉しそうに言い、俺のそれを握った。
本当に、おかしくなりそうだ……。
部屋に響く卑猥な水音。勝手に濡れる訳もないのに。
我を忘れて、俺は叫んだ。

「カナタっ……!も……だめっ!き……てぇ……。ゆ、指じゃ嫌だぁっ」
「かわい……ミツ。俺のものになって……」

指が出ていく感触があり、圧迫感が消えたことに少しホッとしたのも束の間。

「……!」

全く比べものにならない質量のモノが、あてがわれたのを感じた。
続くのは、身体を真っ二つに引き裂かれるような感覚。十分慣らしてもらったはずなのに、壮絶な痛みが俺を襲う。

「はっ……はっ……ぁっ」

短い呼吸を繰り返して、痛みをやり過ごす。

「ミツ、上手。……そう、そのまま息止めないで……」
「んっ……」
「くっ……きっつ……」
「カ……ナタっ……全部ちょ……だい」
「そんな煽らないでっ……」
「……!」

ズンッと一際強い衝撃を感じ、身体の中から臓器を突き上げられる感覚に、息が詰まる。

「ミツ……全部入ったよ」
「ぜ……んぶ?」
「そう、全部。……これでミツは全部俺のものだ」

感無量といった様子で囁くカナタを見れば、瞳から涙が零れ落ちた。

「好きだよ……カナタ」
「ミツ……幸せだ……俺」
「俺も……最高に幸せ……」

微笑んで言えば、身体の中でドクンと脈打つ何かを感じた。

「……も、これ以上、でかくすんなよ……ぉ。」
「だって……ミツ、その顔は反則。ね……動いてもいい?も、限界」
「いーよ……っあっ!」

言い終わらないうちに、カナタが動き始め、俺は身体ごと揺すぶられた。

「やっ……べ、ミツ!持ってかれそ……」

カナタが艶っぽい声を出す。
それに煽られた。

「やんっ……あっ……あっ」

リズムに合わせ、喘ぐことしかできない。
も、好きにしてくれ……。

「……ごめっ……ミツ、夢中になりすぎた!……ミツも感じてっ」

最奥を突いていた動きが緩くなり、浅いところでグラインドが開始された。
カナタはそのまま、探るように色んな角度から注挿する。

「……!」

まただっ……!
指で散々刺激され、敏感になったあの場所を、カナタのモノが掠めた。身体が跳ねる。

「やっ……や……あっ」

言葉にならない。

「気持ちいぃ?ミツ…」
「んっ……んっ……」

俺の返事を奪うように、カナタに唇を奪われる。
すぐに深く激しくなるキス。飲み込みきれない唾液が、首筋を伝う。

「ミツっ……!俺っ……もうっ……余裕ないっ」

切羽詰まったようにカナタが言い、激しく突き上げられた。

「あっ……やんっ……カナタっ……もっとっ!」

唇が解放され、俺はカナタを求めた。
めちゃくちゃにされたい。壊れるほど、突いて……感じて欲しい。

「ミツ……一緒に……!」

片手で俺のモノを扱きあげながら、速度を上げて奥を突き上げる。
カナタの雄々しさに、クラクラした。
頭が、スパークする……。

「ん……っ!」
「イッ……くっ!」

壮絶な快感の向こう側で、俺は意識を手放した。
真っ白になる頭の隅で、中に広がる温もりに、カナタも一緒に達したことを感じた。



身体が重い……。
シーツに縫い付けられたように動かない手足に、困惑しつつ、頭が覚醒してゆく。
まるで金縛りみたいだ……。意外に冷静な自分に苦笑する。

動かない身体は諦めて、首だけ回して隣を見る。
目を閉じて、薄く開いた唇。そこから規則正しい呼吸音が聞こえる。
彫刻のように美しい寝顔にしばらく見とれた。

……カナタと、繋がれた。
身も心も満ち足りた俺は、再び眠りの世界に旅立つべく、目を閉じた。
幸せの余韻に浸りながら。



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